晴美制作室 株式会社

31.01.2002フッとタイムスリップ ―『真情あふるる軽薄さ』 (初演が1969池袋パルコ開店と同年!)

 昨年1月のシアターコクーン公演は蜷川幸雄演出『真情あふるる軽薄さ2001』だった。初演の演出とは異なり、ライフルを持った少年が全員を射殺して舞台奥に開いた搬入口から渋谷の夜の街に消えていく鮮烈なラストシーンは忘れられない。

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 6月末、恵比寿の東京都写真美術館で開催された「女の70年代 ― パルコポスター展」に出かけた。(パルコは私の元職場)今もまったく色褪せないポスター群と懐かしいクリエーターの方々、元同僚に会う。70年代に若者たちの間にパルコ旋風を巻き起こした元専務増田通ニ氏のあいさつで、池袋パルコのオープンが1969年と聞いて「エッ!!」と思った。

 『真情あふるる軽薄さ』が新宿の映画館で深夜上演され、機動隊に扮した役者たちと、それを本物と思った観客とが入り乱れて騒乱状態になったあの伝説の舞台は、1969年9月。その2ヵ月後にパルコがオープンしている。東大安田講堂が落城し、大学紛争に機動隊の導入が日常化した闘争の季節から、女とファッションの時代へ。1969年を境に時代がグルリと回るのが見えるようだ。

 その後のパルコ文化の隆盛については「幻想の食事 ― ジャン・ジャック・ルソーとパルコ文化」(草森紳一著『見立て狂い』所収・フィルムアート社刊)というすぐれた評論がある。これが雑誌に掲載された当時、雑誌を手に専務室を飛び出した増田専務が、「おいおい、オレ以上にオレのことを分かっている奴がいるぞ!」と叫んだのは社内では有名な話。

 あれから20余年。時代は何回転したのかしらん。幻想を食べすぎた私たちは……
 ア、古すぎるね、こんな話。

 さて、最後に清水邦夫作『真情~』から鮮烈な言葉を。

 ― 君は、真情あふるる君は、忍びより、おおいかぶさり、なおも執拗に埋めつくそうとする闇に対して、敢然と戦いをいどむ時機がきた。恥知らずになれ、柔軟になれ、軽薄さを怖れるな ―

追伸:『真情~』プログラムは、1969と2001をつなぐ田原総一郎、坂本龍一などのインタビュー満載。騒乱の時代の雰囲気に浸りたい人、当時を知りたい人は新宿ゴールデン街の「桂」、中嶋さんを訪ねてみて下さい。(T)